ポーテージ・マンスリーマガジン

第10号5月号2018年5月31日(木)発行 編集:広報部

PDF版はこちらからダウンロードしてください。  ≪バックナンバー≫

〈今月のフォーカス〉

知的障害のある生徒に大学進学を-学びのニーズに応じたキャンパスライフとは-

日本ポーテージ協会 会長 清水直治

 

 970年に建立されたイスラム世界のアル=アズハル大学は、世界最古の大学の一つで、創立当時から入学随時・出席随時・修了随時という3信条があって、学びたいときに入学し、出欠は自分で決めて、学び終われば自由に修了する制度が今も続いています。

 日本では今年は、18歳人口が減少し始める「2018年問題」が現実となる年で、「大学全入時代」が本格的に始まります。他方で新設大学の林立で、私大の4割が定員割れに陥っている状況があり、さらに偏差値偏重の大学選びと知識詰込み型の入学試験の弊害を解消しようと、2020年度導入に向けて、大学入試改革が行われようとしています。

 近年日本でも、様々な障害のある生徒の大学受験の配慮や修学支援が進むなかで、しかし知的障害のある生徒の進学率はごくわずかにしかすぎません。IQ(知能指数)や偏差値で、将来が決まるわけではありません。アメリカ合衆国では、知的障害のある生徒の大学進学は、2008 年「改正高等教育機会均等法」のもとで、2016年には全米で248大学が受け入れています。例えば、「THINK COLLEGE」は、知的障害のある生徒の大学進学を全米で推進しているプロジェクトで、またミネソタ大学が開発した「check&connect」モデルは、ユニバーサルデザインの考え方をベースに、キャンパス全体に適用できる教育モデルです。

 知的障害があっても、大学進学から排除されることなく、一人ひとりの学びのニーズに応じた「合理的配慮」のもとで、インクルーシヴ高等教育が、一人ひとりの成長の糧として実践されることを願いたいと思います。

5月の満開のツツジを背に、ポーテージ相談にやってき子どもとお母さんの満面の笑みに出会いながら、想いを重ねた一時でした。

 

 

 

 

〈わたしのアイディア〉

ABA(応用行動分析)と筋トレ

日本ポーテージ協会 大阪支部 今林和哉

 

 ある調査によると、2011年より2016年の5年間にフィットネスクラブの数は約3580軒から約4950軒に増え、その会員数も約400万人から約424万人に増えてきたようです。その結果から、フィットネス人口は日本の総人口の3%までになったといわれています。

 しかしこの数字は、フィットネスクラブに通う人たちの数であって、フィットネスに興味がある人口が3%しかいない、ということではないと思います。

そんな私も、3%のフィットネスに通う人口の外の、フィットネスに単に興味を持っていた側の人間でしたが、ABAを学ぶことでフィットネス人口に加わりました。

 きっかけは「ちょっと運動しよう」でした。具体的な目標の設定が重要であると知り、「6ヵ月後の体脂肪率を15%にする」、「1週間の運動時間を7時間以上にする」、「ベンチプレスで90キロを12回挙げる」などを目標にしました。

 これらの目標の達成に向けて、計画を立てることが大事です。どの目標も、私の行動レパートリーにはない行動ですから、それらの新しい行動の形成に向けてはじめに取り組んだのが、「結果条件の操作」でした。すなわち、運動した後に得られるごほうびを用意してみました。しかし結果は、目標の行動の増加につながりませんでした。ペナルティ(罰)も同時に用意していましたが、これでも目標の行動は増えませんでした。

 次は、「先行条件の操作」に取り組みました。「ウェアを買い揃える」、「運動スケジュールをつくる」、「運動を始める時間にはアラームを鳴らす」、「ジムに一緒に行く人を見つける」など、目標の行動が起こり易いように工夫してみましたが、これもなかなかうまくいきませんでした。運動する目的やねらいも明確に書き出してみましたが、これも同じ結果でした。さまざまな煩悩や誘惑が起こってきて、目標の行動の増加につなげられませんでした。

最後に取り組んだのは、目標の行動を細分化した標的行動をスモールステップで達成していくやり方でした。気をつけたのは、決して失敗しないくらいに細分化して、失敗することなく目標の行動が達成できるような標的行動を、スモールステップで設定することでした。「2日に1度、30秒だけ運動する」という標的行動から出発して、しだいにその頻度と時間をほんの少しずつ長くしていくと、まったく失敗せずに継続できました。30秒がいつか10分間になり、1日だけがいつか7日連続になり、継続を実感することができ、そのことがごほうびになりました。これまでの失敗の経験もあり、一度転がり始める(いい方向に変化する)と、今何を自分に課せばそれがガソリンになるかがわかってきたようです。スモールステップで設定した標的行動を順次達成し、目標の行動を達成することができました。

 振り返ってみれば、私にとってこれは、改めてABAを適用して行動を形成したまさに実験でもあり、その成果を再確認する機会にもなりました。

 

 

 

「ポーテージ・マンスリーマガジン」も、創刊2年目に入りました。今回から、親と家族が家庭で使える応用行動分析の原理や技術について連載を始めます。(会長 清水直治)

〈新連載〉

まるわかり親のための応用行動分析テクニック

第1回家庭での子育てのなかで

 

日本ポーテージ協会会長 清水直治

 

 発達に遅れや偏りのある子どもの発達を0歳から支援するための早期教育プログラムである「ポーテージ早期教育ガイド(PGEE)」が、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ポーテージで最初に誕生したのが1972年でした。このプログラムは、アメリカ合衆国はもとより、アジアや南米、アフリカの数多くの国と地域で活用されてきました(これらをまとめて「ポーテージプログラム」といいます)。日本では、1983年に「ポーテージ乳幼児教育プログラム」として翻案し、2005年に改訂版「新版ポーテージ早期教育プログラム」を出版しました。

 ポーテージは酪農地域で、面積が広大だったにもかかわらず、人口は1万人にも満たない人たちが分散して住んでいるために、ポーテージ相談員が家庭を訪問して親(保護者)の子育てや発達を支援する「家庭中心アプローチ」を採用することになりました。

 ポーテージプログラムが、子育てのなかでよく使われる理由に、次の3つの点がしばしばあげられます。①家庭や日常生活の中で、親(保護者)の子育てを支援、②一人ひとりの子どもの発達に応じた個別プログラム、③子どもの指導に応用行動分析(ABA)の原理を適用。

 ポーテージプログラムはまた、保育園や幼稚園、児童発達支援事業で子どもの発達支援にたずさわる人たちにもよく使われます。そして、発達が気がかりな一人ひとりの子どもの行動の発達を促すために、指導の目標を行動目標として設定し、その達成に応用行動分析(ABA)の原理や技術を適用します。

 

 

 

編集あとがき

 ポーテージ・マンスリーマガジンも創刊2年目を迎えました。今後も、情報の即時性をテーマに、皆さんが必要とされている情報を提供できるよう、鋭意努力してまいります。引き続き、よろしくお願い致します。(南)

 

情報をお寄せください

 認定NPO法人日本ポーテージ協会編集部では、会員の皆様より『ポーテージ通信』および『ポーテージ・マンスリーマガジン』に掲載する国内・国際活動に関する情報を募集しています。全国の支部や団体会員の方々のイベント情報やニュース・インフォメーションなども、積極的に取り上げたいと思います。事務局編集部に情報をお寄せください。

 

 

認定NPO法人日本ポーテージ協会

Japan Portage Association

 

〒116-0012 東京都杉並区和田3丁目54番5号第10田中ビル3階3号

TEL:03-3313-4822  FAX:03-3313-2575

URL:http://www.japan-portage.org

Facebook: https://www.facebook.com/jportage/

 

 

© 1985 - 2015 Japan Portage Association